映像に関する疑問
8kテレビ、フレームレート60pなど、映像の微細化の技術はどんどん向上しています。
新規格が出るたびに、人間が認識できない、認識限界説が沸き起こる中で、なぜ映像の微細化、ハイテク化が進むのでしょうか。
今回は後半に動画を交えながら映像に関する疑問を紹介します。
解像度の話
少し前置きです。
4kテレビがの普及が始まる中、すでに8kテレビが登場し始め、テレビ映像の高画質化が進んでいます。
そもそも解像度とは、映像の点々(ドット)の数の事です。
ハイビジョンテレビは横に1920ドット、縦に1080ドットの3色の光があり、各ドット3色の光のバランスを調整して映像を表現しています。
テレビ画面を拡大していくと、こんな感じでドットが並んでいます。
赤、青、緑の三色ワンセットを1ドットして、ハイビジョンはこの点々が横に1920個、縦に1080個ならび映像を表現しています。
別の表現では、207万3600画素ともいわれています。これは単純に縦×横、要するに1920×1080で出てくる数字です。
要するに、ハイビジョンテレビには、合計約207万個のドットが埋め込まれています。
では、4kはというと、縦と横、それぞれ2倍のドットが敷き詰められているということです。
数字にすると、縦3840ドット、横2160ドット、計約830万画素というわけです。
縦2倍、横2倍のドット数、なので合計4倍のドットで映像表現することから4kと呼ばれています。
また8kテレビは4kよりも縦横2倍のドット数が配置され、合計4倍のドットが敷き詰められています。
ハイビジョンと8kを比較すると、合計のドット数は16倍にもなり、3300万画素の映像となわけです。
では本題。
4kは人の目には認識できないのか、同様に8kは人の目には認識できないかという点です。
結論から言えば、認識できます。何を根拠に認識できるのでしょうか。
論点は2つ、認識できる出来ないの意味と、密度のお話。
4k、8kというは単なるドット数の話です。
例えば、4kのテレビと4kのスマホを比較します。画面サイズは圧倒的に違いますが、画面の中に入っているドットの数はどちらも830万個。
よって、画面が大きいほど1つのドットは大きくなり、画面が小さいほど1つのドットは小さくなります。
なので、4kや8kは人間が認識できるのかという議論はそもそもナンセンスというわけです。
議論するのであれば、ドットの大きさ、密度を対象に、認識できるのかできないのかを語る必要があります。
ドットの密度には便利な単位があります。1インチの四角の中に何個のドットが入っているかという単位がppiです。
例えば、10ppiといえば、1インチ、約2.5センチ×2.5センチの四角に10個のドットが入っていることを示します。
人間の限界は300ppiといわれています。
実は最新のiPhoneのドット密度は現在450ppiを超えています。要するに2.5p四角に450個以上のドットが入っていて、それが映像を表現しています。
4kディスプレイ搭載のスマホがうわさされていますが、その密度は800ppiを超えており、一説の300ppi限界説を上回っているということになります。
一方、テレビ画面はスマホに比べて圧倒的巨大です。8kになったとしてもppiは人間の限界を超えることなく、認識できることになります。
が、そもそも映像の美しさと人間の目の限界は別物です。
300ppiの映像と800ppiの映像を比較すると、確かに違いが分かります。
これは、ドットの認識力というより、「実在感」です。
「まさにそこにある」という実在感が異なるのです。
画素がどんどん微細化していき、限界説や無意味説が沸きあがりますが、人間の目は数値で表されるものではなく、感じ方が重要で、確かに高画質の映像は美しいのです。
テレビやスマホの高画質化は無意味ではないのです。
映画はなぜ24pなのか
例によって前置きから。
24p、30p、60p。
これはフレームレートの事です。
映像は、静止画の連続表示であり、例えば1秒間に24枚表示するフレームレートを24fpsといいます。
初めて聞いた人もいるかもしれませんが、超身近にフレームレートが出てきます。iPhoneのカメラです。
手持ちのiphoneのカメラの動画設定で、24p、30p、60pの設定が変更できます。
1秒間に表示する画像が多いほど滑らかになります。
映画は1秒間に24コマ、テレビ放送は30コマ(60i)で配信されています。
では本題です。
Q&Aサイトには30p以上は人間には認識できないので60p、まして120pなど無意味だという説も出ています。
それは本当でしょうか。完全に間違いです。
先ほどiPhoneの動画設定の話題をしました。実際に30pと60pを切り替えて撮影してみてください。
驚くほど映像が違います。60pで撮影すると、実在感が圧倒的に増して、滑らかできれいな映像になります。
通常30pが初期設定になっていることもあるので、60pへの切り替えをおすすめします。
これはちゃんと人の目が30pと60pの違いを認識していることになります。
さらに、最新のテレビでは60pや30pの映像を、前後の画像から新しい画像を生成して120pの映像を作り出す技術が主流になっています。
よく、スマホのレビューに、ヌルヌル動くという表現が出てきますが、このヌルヌル感はコマ数が多いほど高くなります。
現実に太陽光の下で動くものを見るとき、コマ数は無限、無限fpsです。
また、60ヘルツの蛍光灯は1秒間に120回点灯と消灯を繰り返しており、蛍光灯の光下で見るものすべて120fpsの動きで認識していることになります。(周波数の倍の速度で駆動しています)
1秒間30コマや60コマの動画の中に、一コマだけ別の映像を入れても人間は気づきませんが、30fpsと60fpsの映像の違いははっきりと認識可能なのです。
よって、認識できる出来ないの概念が全く異なり、コマ数が多い映像ほど滑らかで美しいというのが正しい回答です。
では、映画はなぜ今だに24pなのでしょうか。
こちらも一説には24pを60pにすると容量が大きすぎるなどといわれていますが、完全な間違いです。
例えば30pの映像と60pの同じ画素数の動画では、単純に2倍の容量になりますが、皆が持っているスマホでさえ60p映像を録画、保存、再生が簡単にできます。
映像を商売とする映画が、容量の問題で24pを採用しているというのは全くのナンセンスです。
ではなぜ24p(24コマ)なのでしょうか。結論は、映画っぽいから、という何ともしっくりこない回答になります。
テレビドラマの映画版を見たことがある人も多いでしょう。例えば踊る大捜査線などです。
同じように自宅のテレビでドラマや映画を見ても、ドラマと映画はまるで雰囲気が違います。
もちろんコマ数だけが要因ではありませんが、最も映画らしさを表現しているのが24コマという映像のフレームレートというわけです。
同じ映像を異なるフレームで比較した動画があります。
24、30、60fpsの3種を比較しています。
24fps、映画のフレームレートであり、雰囲気が出ます。
映像を作品とするようなイメージの動画になります。
30fpsは、テレビと同じフレームレートであり、トーク中の人物など自然な感じに表現できます。
60fpsは、激しいモーションの撮影に最適です。
特にスポーツカーやGoProの撮影は60コマが合っています。
ハリウッドでは、24コマ以外にも30コマや48コマ、60コマ、120コマの映画も検討されています。
技術的には120コマ、さらに240コマも可能なのですが、やはり選ばれたのは24コマです。
30コマでは安っぽい映像になり、60コマでは雰囲気が意図しない方向になってしまいます。
過去には実際に24コマの倍となる48コマで撮影された映画もあります。
映画館の映写機は48コマで駆動していて24コマ映画では同じ画像を2回映写し24コマにしています。
なので、48コマ上映は可能です。
実際に映像を見てみると、なんともゲームっぽい映像となっていて、評判が分かれた映画でした。
ちなみに今後予定される3D映画では48コマが採用される予定です。
要するに、通常の映画のような、非現実感を演出するには24コマが最適で、逆に、3D映画のように、映画の映像を現実的に感じさせるには48コマが最適ということです。
コマ数を認識できるかできないかという議論は、コマ数を意識しているかどうかで結論が変わります。
24p、30p、60pの映像は、比べなくても意識すればだれにでも認識できます。
ただ映像に没頭しているときは、コマ数のことは忘れています。
映画の映像で人が没頭する、映像に引き込まれるフレームレートが24コマという人間の感性から、現在でも映画は24pが採用され続けています。
まとめです。
少なくとも1秒間に120コマ、120fpsの映像程度なら人の目に認識可能で、フレームレートが高くなるほど実在感が増します。
一方、映画は24コマが最適です。
人が映画に引き込まれる理由。
現実を生きる私たちは、非現実世界にあこがれや興味を持っています。
映画は非現実を表現する芸術です。
実在感、実態感に乏しい、24fpsの映像が非現実的であるからこそ、映画に引き込まれるのでしょう。

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