なぜ月を目指すのか
1969年7月20日。
初めて人類が月面に立った歴史的瞬間の日。
それから50年以上がたった今、中国やインドは、有人月面着陸を計画し、実行しようとしています。
アメリカとロシアの月面着陸競争がすでに終了した現在、なぜ中国は月を目指すのでしょうか。
理由は、今後の国家繁栄に最も重要な挑戦であることがわかります。
詳しく紹介しましょう。
中国の野望
中国の野望を知るためには、過去の植民地について詳しく知る必要があります。
国家が未開の新し土地を植民地にするには、必ず共通の過程が存在します。
第一段階。探検隊が新大陸に上陸、旗を立てます。新しく発見した土地がどれほどの広さなのか、また、どんな形なのかを把握するために測量を行い地図を作ります。
第二段階。小規模な派遣団によって、前哨基地を作ります。前哨基地では、より詳しく未開の土地を調査し、発見した新たな資源をどのように手に入れ、自国に送るのかを研究します。
第二段階は、比較的多くの人員が上陸しますが、第三段階と大きく異なる点があります。
それは、本国の支援と補給が無ければ、すぐに前哨基地は消滅することです。
本国から送られる食糧や物資によって、第三段階へ移る準備を進めます。
第三段階。前哨基地の運用が安定した段階で大量の人員を派遣、自国からの物資に頼ることなく、現地で材料や食料を調達し経済圏が完成します。
新たに手に入れた土地に、労働者が移り住み、子供が生まれ、経済活動が安定します。
そこでの活動によって、新たな資源が手に入り、これが自国に利益をもたらしてきました。
これは、コロンブスがアメリカ大陸を発見した時など、例外なくこの順序をたどります。
新大陸、新領土を発見し、その土地の資源を利用して国は成長を続けてきたのです。
例外のないこの原則に従えば、月も同じ事がいえます。
実際に、月の植民地化はすでに第一段階を終え、第二段階に入ろうとしています。
1961年にアメリカは月に旗を立てるために、アポロ計画を立案。
ロシアと熾烈な宇宙開発競争を繰り広げ、8年後の1969年、ついに月に降り立ちます。
月を調査したところ、そこには何もなく、あるのは肺に入り込むと病気になりそうな粒の小さな砂粒だけ。不毛の大地のみでした。
それ以来、人類は月に二度足を踏み入れることはなく、旗を立ててから60年物間、月は放置されています。
しかし、ここ最近、経済大国は再び月を目指すことを決定しています。
大航海時代の原則通り、すでに野心的な国は月を開発するべく研究を進めているのです。
実際にアメリカは2009年に、月を精密に測定する衛星、LROを打ち上げます。
LROは月の上空50kmという低軌道を周回し、解像度50cmという精密カメラを搭載。
有人飛行の着陸ポイントや前哨基地建設のための情報収集を進めています。
対する中国も、着々と月を目指しており、2003年に国家プロジェクトとして嫦娥(じょうが)計画を発表。
月に無人探査機を着陸させ、水や金属などの資源を調査しています。
月探査が最も進んだこの二か国は、すでに前哨基地を作るという第二段階へ進む準備は完了したと考えらえます。
宇宙開発のニュースは日本でも話題になります。
「中国の探査機が月面着陸」などの報道です。
一方、報道ではその真相が語られることはありません。
宇宙開発で抱く素直な感想は、軍事開発、国家躍進とは何の関係もなさそうで、経済活動とは完全に切り離された出来事だと感じます。
単なるロマンであり、国の趣味程度にしか考えない人も多くいるのが事実です。
しかし、宇宙開発の裏には驚くほどの野望が隠れています。
その野望が核融合炉によるエネルギーの支配です。
核融合
By CRPP-EPFL, Association Suisse-Euratom - CRPP-EPFL, Association Suisse-Euratom, CC BY-SA 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1237748
核融合発電はご存知の通り、核融合によって得られるエネルギーを利用した発電のことです。
その名の通り、原子を融合させることで莫大なエネルギ―を取り出し発電します。
核融合炉がもたらすエネルギーは、従来の発電などと比較にならないほどの莫大です。
核融合発電が実現すれば、この世のエネルギー問題がすべて解決するといいわれる革命的な技術です。
現在主流の火力発電は、地球の資源を燃やして得た熱を利用します。
燃焼は分子同士の結合反応であり、一見莫大なエネルギーを持っていそうですが、そうではありません。
石油や石炭を燃やしてエネルギーを得る方法は、エネルギー効率が非常に悪く、、二酸化炭素や有害物質が発生することから、理想の発電ではありません。
そこで、燃焼よりも圧倒的に効率が良い、原子力発電が開発されました。
原子力発電は、原子が分裂するとき発生する熱を利用します。
燃料は、ウラン235であり、ウランがクリプトンとバリウムなどに分裂するときに熱を発生させます。
その熱量は圧倒的で、燃焼の数万倍の効率を誇ります。
莫大な熱量を発生させ、高効率な核分裂発電ですが、問題があります。
核分裂は、連鎖的に反応が進むため、核分裂を安定させるのは非常に難しい技術が必要です。
1つの原子が2つに分裂すると、複数の放射線が発生し、その放射線が次の核分裂発生のトリガーとなります。
1つの分裂が3つの分裂を引き起こし、3つの分裂が9つの分裂を誘発します。
よって、核分裂を何も制御しない場合、反応が指数関数的に増加し、最終的に爆発となります。
原子力発電の技術は、分裂の暴走をいかに抑えるかに焦点を当てて開発されており、発電所は常に分裂反応を減速させ続けています。
分裂を抑制するシステムが不調を起こすと、核分裂が制御不能となりに暴走を起こす危険な発電です。
また、発電後には、使用済み核燃料が出ますが、それを処理する方法がなく、現在は地面に埋め立てる方法しか処分方法がありません。
核融合はどうでしょうか。
核融合は核分裂とは異なり、2つの原子が1つに融合する反応です。
そのエネルギーは核分裂の4〜10倍以上と、超高出力、高効率な反応です。
核分裂と最も異なるのが、その安全性です。
核融合を発生させるためには、超高温の環境が必要です。
物質に熱を加えると、固体から液体、気体へと変化します。
さらにエネルギーを加えると、気体からプラズマに変化します。
核融合反応は、このプラズマ状態を維持することで原子を衝突させ融合させます。
プラズマの維持には、超高圧、超高温の環境が必要で、わずかな装置の不良が、発電停止につながります。
よって、核融合発電は、莫大なエネルギーを安全に得られるという、現在考えられる最高のエネルギー発生装置になるのです。
では、核融合と月面探査は何が関係するのでしょうか。
最も身近な核融合反応は太陽です。
太陽は中心の超高圧、超高温によって水素がプラズマとなり、水素原子が衝突しヘリウムに変換させる核融合を行っています。
しかし、地球上で太陽の中心の環境を再現することは簡単ではありません。
そこで、ヘリウム3を利用します。
水素とヘリウム3の反応は、水素同士の核融合よりも比較的簡単で、より現実的な発電方法です。
安全性も高く、エネルギー効率も格段に良いため、この技術を手に入れれば、エネルギー問題は解決します。
問題は燃料の調達です。
水素は水を電気分解すれば無尽蔵に入手できます。
しかし、ヘリウム3は人工的に大量生産することはほぼ不可能です。
方法は、中性子をリチウム原子に照射し、三重水素を作り、それをベータ崩壊させることで可能ですが、ベータ崩壊にかかる半減期は12年。
ヘリウム3の完成には忍耐が必要です。
地球に存在するヘリウム3を採取する方法もあります。
太陽風に含まれるヘリウム3は、常に地球に降り注いでいますが、そのほとんどが大気に取り込まれ、海にはほとんど溶け込みません。
大気中のヘリウム3の濃度はあまりにも低く、現実的に不可能なのです。
ヘリウム3を入手するにはどうしたらよいのでしょうか。
そう、月面です。
月には大気がなく、太陽風がダイレクトに月面に届きます。
月面の砂にはヘリウム3が高濃度に含まれており、核融合の燃料として取り出すには最適なのです。
月面基地と輸入
アメリカと中国による月面基地計画は順調で、すでにヘリウム3の採掘基地建設に最適な場所を見つけたとされています。
近いうちに中国は月面有人飛行を計画しており、近い将来、アメリカに次いで世界で2番目に人を月面に送り込む予定です。
また、中国独自の宇宙ステーション計画によって、月に基地を建設するための物資を輸送する計画も進んでいます。
同様に、月に人類を始めて送り込んだアメリカも、月面基地建設に向けた計画が進んでいます。
第二段階によって月に前哨基地を作り、専門家が安全に研究できるようその規模を拡大させます。
第二段階が完了すれば、民間の労働者や一般市民が月面で経済活動を行えるような大規模な植民地を作り、ヘリウム採取や様々な資源を採掘します。
月でヘリウム3を抽出し、中東からタンカーで石油を輸入するように、ヘリウム3を月から地球に輸入することができるようになります。
経済発展は、エネルギーの確保が根幹です。
水力、原子力、太陽光など、発電方法が多様化していますが、自動車燃料、戦闘機や戦車の燃料、軍事基地の発電などは石油が最も重要であることに変化はありません。
これまで石油の大半を輸入に頼っていたアメリカですが、岩盤に練り込まれた石油であるオイルシェールを採掘する技術の発達によって、サウジアラビアを抜いて世界最大の産油国へと成長。
石油輸出国へと変貌しました。
これによって、アメリカは安くエネルギーを手に入れられるようになり、競争力も向上しています。
対する中国も、産油量は世界8位前後を推移しており、自国生産に加え、莫大な量の石油を輸入し、経済を拡大しています。
現状、世界経済はアメリカと中国の二人勝ちですが、グローバル化によって、国同士の格差は縮まっています。
発展途上国の発展によってエネルギー需要が増加。
産油国以外の国がエネルギーを得るのが難しくなりつつあります。
この状況を打破し、飛躍的な経済発展が見込まれる技術、それが、核融合発電と、月面基地建設によるヘリウム3の入手というわけです。
銀河を制する国へ
生命進化の原則は生存領域の拡大です。
原子と分子しか存在しなかった原始の地球では、海ができ、分子が結合し単細胞ができました。
その後、単細胞が結合し、多細胞生物へと変化し、生物が誕生します。
多細胞生物が海の中で進化をはじめ、海は多種多様な生命で満たされていきます。
そして歴史的瞬間が始まります。
「初の探検隊」が陸へ上がり、我々の祖先である哺乳類が誕生します。
生物は、だれも踏み入れたことのない陸という新境地に冒険し、陸上を支配していったのです。
そのご、人間が誕生し、コロンブスによってアメリカが発見され、人類は世界中を活動範囲にしました。
過去の進化は非常にドラマチックですが、今後の生物の進化は宇宙へと広がっていきます。
生物の進化は今後3段階に分けられます。
1段階目は、惑星の資源をすべて利用できるタイプ1
2段階目は、恒星系の資源をすべて利用できるタイプ2
3段階目は、銀河系の資源をすべて利用できるタイプ3
現在私たちは、タイプ1にあり、地球の資源のほぼ8割を利用できる技術を手に入れました。
進化の原則によって、いずれ人類は太陽系の資源を求めて地球から月や火星に活動範囲を広げていきます。
その第一歩が月面基地建設とヘリウム資源の利用というわけです。
すでに、地球上に残された資源のうち、未使用の資源は全体の2割しか残されていません。
次の国家間競争の勝敗を決める最も近未来の決着が、月面開発となることは明確であり、日本がどれだけ宇宙開発に貢献できるのかが、今後の日本経済を大きく変える要因の一つとなりそうです。

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