日本はミサイルを防げないは嘘
隣国によるミサイル攻撃の脅威が増す中、日本のミサイル防衛能力について様々な視点から語られています。
結論から述べれば、「日本はミサイルを防衛する能力持っており、ミサイル攻撃により国益の損失を最小限に食い止めることができる。ミサイル攻撃を防ぐことは可能である」の一言で結論付けられます。
この一文には深い意味があり、その意味を含め、日本のミサイル防衛の実態について詳細にお伝えします。
ミサイル防衛の本質
ミサイル防衛の効果について様々な意見があります。
迎撃ミサイルの命中率を議論したり、敵国ミサイルの数と迎撃ミサイルの数の差から、すべて防ぐことは不可能でミサイル防衛は無意味と議論されたりします。
実はこれはミサイル防衛の本質ではありません。
ミサイル防衛はすべてのミサイルを防ぐために導入するのではありませんん。ミサイル防衛には大きく二つの意味があります。
一つは、敵国にミサイル攻撃をあきらめさせる手段です。
核ミサイルの攻撃を行う敵国にとって、第一波攻撃、かつ先制攻撃が重要です。
ミサイル攻撃によって都市機能をマヒさせ、核による報復を防止することで、一方的な勝利を実現します。
しかし、もし敵国にミサイル防衛がある場合、そう簡単ではありません。
第一波攻撃を迎撃されれば、次に待っているのは敵国からの核ミサイルの嵐です。よって、第一波攻撃の失敗は自国の消滅、敗北を意味します。
それほどミサイル攻撃は先制攻撃が重要であり、その先制攻撃を崩すのがミサイル防衛というわけです。
よって、ミサイル防衛システムは、敵の核ミサイルの数だけそろえる必要がなく、報復能力を十分に温存できるほど防衛できれば、機能しているということになります。
ミサイル防衛の2つ目の本質は、経済戦争にあります。
ミサイル防衛が整った国を攻撃する場合、ミサイル防衛を回避する技術や、迎撃ミサイルの数を上回る核ミサイルを開発しなくてはいけません。
それには、莫大なコストと技術が必要であり、敵国の経済力が高ければ高いほど、労力とコストが必要です。
現在、アメリカは世界最強のミサイル防衛システムを構築しており、アメリカのミサイル防衛を突破させる作戦を講じるには、かなりの経済負担が必要です。
この経済を負担と、国を発展させるためにつかう予算を天秤にかけさせ、核開発をあきらめさせるというのが、ミサイル防衛の2つの本質であり、アメリカの方針でもあります。
よって、ミサイル防衛によってすべてのミサイルを防げないから無意味だという意見は、まったくもってナンセンスな意見であるということです。
では、日本のミサイル防衛能力はどれほどで、また、隣国のミサイル攻撃を防ぐことができるのでしょうか。
ミサイル防衛システムを持つのはアメリカだけ
意外に知られていない事実として、ミサイル防衛システムを持つのはアメリカだけです。
日本はミサイル防衛システムを持っていません。
どういうことでしょうか。
核ミサイル防衛の実態-日本は核を迎撃できるのか?で紹介している通り、ミサイル防衛システムは、単なるイージス艦やPAC3などの機材やミサイルのことではありません。
一つのシステムです。
ミサイルは発射から着弾まで僅か数分から十数分というのはご存知の通りで、この僅かな時間でミサイル発射の探知、追尾、迎撃を行う必要があります。
よって、ミサイル防衛は全自動されたシステムとして運用することが必須です。
もし、人の手を介在する場合、ミサイル探知をレーダー部隊に報告し、ミサイルの位置を捜索。ミサイルの弾道を計算し迎撃部隊に報告。迎撃部隊がミサイルを迎撃なんてルートをとっていたら、迎撃する前に核ミサイルはすでに着弾してしまいます。
ミサイル防衛システムをわかりやすく言えば、世界中のミサイルを探知できるセンサー、ミサイルの弾道を追跡できるセンサー、発射の探知とミサイルの軌道を割り出すコンピュータ、ミサイル迎撃のためのセンサー、ミサイル迎撃を実行するための機材をすべて一つのシステムとして運用します。
要するに、パソコン画面一つで敵のミサイル発射から迎撃までを把握できるシステムのようなものです。
もう少し詳しく見てみましょう。
日本は現在、ミサイルを迎撃するために、イージス艦を導入しています。
イージス艦には、ミサイルを追跡できる最強のレーダーを搭載していますが、ミサイルの発射を探知することはできません。
イージス艦のレーダーは500q以上先の目標を補足できますが、レーダーの水平線は僅か十数キロです。
レーダーは直進しかせず、地球は丸いため、地上もしくは低空にあるミサイルを探知することはできません。
ミサイルがある程度の高度に達すればミサイルを探知可能ですが、発射してからしばらくの間は探知することができません。
また、ミサイル防衛と通常の防空任務ではイージスのシステムが変わります。
イージス艦が防空任務に就く際には、幅広くレーダーを活用する一方、探知距離は短くなります。
ミサイル防衛の任務の際には、レーダーを一極集中させ、超長距離まで探知を可能にしています。
なので、イージス艦単独では、ミサイルの探知はおろか、ミサイルを迎撃することは不可能です。
PAC3も同様です。
ミサイルの着弾地点や軌道が予測できなければ、射程僅か30〜50q程度のパトリオットでは迎撃することはできません。
よって、日本単独では、ミサイルの迎撃はおろか、ミサイル発射するら探知することは不可能なのです。
現状、日本のミサイル防衛は、アメリカのミサイル防衛システムの一部となっています。
アメリカは、ミサイルの発射を探知する衛星、軌道を追跡する衛星、その情報をリアルタイムで処理するコンピューター、そのコンピューターから迎撃命令を出し、イージス、PAC3、THAAD、GDIが対処する一つのシステムで運用しています。
日本は、そのシステムの中で、実際にミサイルを迎撃するイージス艦とPAC3のみを運用しているというのが現実なのです。
アメリカは、日本以外に韓国やヨーロッパをシステムに参加させており、イージスやミサイル迎撃機材を売却・提供しているのです。
北朝鮮によるミサイル発射の情報が、韓国から流れてくることがあります。
あれは、アメリカが発射を探知し、リアルタイムに韓国軍がアメリカから導入したミサイル迎撃機材に情報を送信しています。
その情報を韓国が情報発信しているのであり、実態はアメリカが持つミサイル防衛システムから得られた情報の一部というわけです。
ミサイル防衛システムはアメリカのものであり、システムは最高の軍事機密となっています。
よって、ミサイルに関する情報は、アメリカの判断で自由にコントロールできます。
アメリカが持つ莫大な情報の一部を、日本や韓国が受け取り、さらにそのごくわずかな情報をマスコミが手に入れて報道しているのに過ぎません。
結論を言えば、現在ミサイル防衛システムを運用しているのはアメリカだけであり、アメリカの同盟国は、そのシステムの一部としての役割を担っていることにすぎません。
ただ、アメリカのミサイル防衛システムは確実に隣国にプレッシャーをかけており、ミサイル発射を躊躇させるのに十分な機能を果たしています。
ミサイル防衛は無意味だということは事実と異なり、十分に機能を果たしており、一方で、日本がミサイルを迎撃できるかどうかというのは、アメリカのコントロール下にあるということです。
