F-15戦闘機
F15戦闘機、通称イーグル。鷲(ワシ)を意味するこの戦闘機は、40年以上にもわたり世界最強の戦闘機であり続けました。
なぜF15は世界最強なのか、F15の性能はどれほどなのか、詳しく紹介します。
F15の原点はF4戦闘機
マクダネル・ダグラス社(現 ボーイング社)は、アメリカ海軍向けの戦闘機としてF4戦闘機を開発します。
F4ファントムは、マッハ2.2という超音速の性能を持ち、ベトナム戦争で最も活躍した戦闘機です。
当時、ベトナム軍と熾烈な争いを広げたアメリカ。地上軍の戦闘を有利に進めるために、まずは空の安全を確保し、自由に航空機が活動できるエリアを作ることが必要でした。
敵地において、空の安全を確保し、自国の作戦機を自由に活動させるエリアを制空権と呼び、制空権確保のためには敵国の主力戦闘機を圧倒的に上回るパワーを持つ戦闘機で敵戦闘機をねじ伏せる必要があります。
制空権を確保するための専用戦闘機を、制空戦闘機とよび、制空戦闘機は空対空専用の最強戦闘機です。
ベトナムエリアの制空権を確保するために、アメリカはF4を開発し、ベトナム戦争に投入し、圧倒的なパワーを発揮しました。
元々は海軍専用に設計されたのですが、予想を超える高性能な戦闘機になり、アメリカ空軍にも正式に採用。当時の世界記録16項目を塗り替え、その出来の良さから日本を始め、世界中の国々がF4を採用しました。
ベトナム戦争に国力を注ぐ中、アメリカの敵国ロシアは秘密裏にF4を超える制空戦闘機の開発を進め、MiG25を完成させます。
1967年にソ連の航空基地において、アメリカはMiG25の存在を確認、その性能を調査したところ、F4の能力を圧倒的に超え、F4を迎撃する制空戦闘機であることが判明。アメリカを震撼させます。
そこでアメリカは、MiG25の性能を圧倒的に上回り、世界中の空を制空できる最強の戦闘機を開発することを決定します。
F15が誕生
1972年、ついにアメリカは世界最強のF15戦闘機の初号機を完成させます。
初号機の完成前に、アメリカは原型機を2年間飛行させ、入念なチェックと作り込みを行います。結果、初号機を試験飛行させ修正点を洗い出したところ、わずか3つしか修正点が出てこなかったという、驚異の作り込みの良さで登場した戦闘機でもあります。
初飛行から僅か2年後1974年にはアメリカ空軍に納入され、1000機を超える大量に生産された制空戦闘機になったのです。
F15は数々の戦争に参加し、敵国を制空権を確保。敵戦闘機との空中戦では、圧倒的な力のもと、敵国空軍を次々と力でねじ伏せていきました。
F15が最強の理由の一つに、強力なエンジンを2基搭載していることが挙げられます。
F15が搭載するエンジンは、F100-PW-220であり、同じ型のエンジンがF16にも搭載されていますが、制空戦闘機であるF15には2基搭載しています。
2基の合計推進力は200kNを超えており、ロケットのように垂直にF15を上昇させる能力があります。
1秒間に300メートル以上の速度で上昇、要するに、富士山の高さまで僅か10秒で上昇します。
最高速度は時速約2500km。東京から大阪まで10分です。
この強烈なエンジンの機動力を活かし、敵に急接近しミサイルを発射し、すぐに現場空域を離脱することを可能にしました。
また、緊急時にはあらゆる場所に即時に駆け付け、敵戦闘機を迎撃することも可能になりました。
F15が搭載する武器は、任務に合わせて様々な選択が可能です。
固定されている武器としては、M61 バルカンがあり、マシンガンのすべて | 威力・連射速度・ランキングを解説でも紹介していますが、1秒間に100発のビール瓶サイズの弾丸を発射し、敵戦闘機や地上車両をせん滅します。
そのほかに、敵に近づき、赤外線追尾によって敵を撃ち落とすAIM-9 サイドワインダー、赤外線ではなくレーダーを利用して敵をロックオン、撃墜するAIM-7 スパロー、到底目視出来ない遠距離から放つAIM-120 AMRAAMなど、様々なミサイルを搭載可能です。
この他に、地上攻撃用の爆弾も搭載でき、F15は空軍が求めるあらゆる任務に対応してきました。
搭乗初期から全世界の制空戦闘機の中で圧倒的な戦闘力を持っていたF15ですが、アメリカ軍は改良を続け、現在は最新のF15Cを運用しています。
F15が優れた戦闘機であったため、2人乗りタンデム仕様や、対地攻撃も可能なマルチロール型など様々な方が開発されてきましたが、F15Cは敵戦闘機を撃ち落とす、まさに制空戦闘機専用の設計、最強のバージョンという訳です。
F15CはAN/ APG-63という、全天候型レーダーを搭載します。
AN/ APG-63は、自機よりも高高度を飛ぶ戦闘機を見逃すことなく、低空を飛ぶ戦闘機を、地形によって乱され発生するノイズの影響を抑え、目視外の遠距離から敵をロックオンできます。
F15はステルス戦闘機ではありませんが、敵機から見つかる前に敵を撃墜するという、現代戦の先頭コンセプトをすでに相当昔に実現できていた戦闘機でした。
このF15Cは日本の航空自衛隊にも導入されます。
F15Cをライセンス契約し、日本国内で製造されたF15をF15Jと呼びます。
性能はF15Cと同じですが、TEWS(戦術電子戦システム)はアメリカの決定により導入することができず、日本独自に開発しています。
TEWSは空対空戦闘におけるもっとも重要なシステムです。
敵戦闘機の位置をとらえ、攻撃された際にはチャフやデコイ(おとり)を発射し攻撃をかわします。
また、レーダージャミングを行い、敵レーダーの目をくらませます。
第5世代戦闘機は戦闘機の機体そのものがレーダーに映らない最新のシステムですが、第4世代戦闘機は様々な戦術電子戦システムを用いて、能動的に自機をステルス化しているのです。
戦術電子戦システムは各国のトップシークレットになっており、世界で最も戦争経験が多いアメリカの戦術電子戦システムは当然世界トップの性能になっています。
戦闘機の戦闘力を決める戦術電子戦システムは、戦闘力そのものを決定するため、アメリカは戦術電子戦システムの搭載を拒否したのです。
よって、F15Jには独自の戦術電子戦システムが搭載されていますが、戦争経験が少ない日本のF15JはアメリカのF15Cに劣る可能性があります。
しかし、F15Jは導入されてから30年間、様々なアップグレードを続けており、世界でも屈指の戦闘力を持つF15を保有、言い換えれば、世界でも屈指の空軍力を持っているのです。
韓国のF15Kと日本のF15Jの違い
F15KとF15Jはそれぞれ韓国と日本が持つF15の型式の総称です。
どちらも同じF15ですが、この2つの戦闘機の性格は全く異なります。
日本のF15Jは先ほど紹介したように、空対空専用、いわゆる敵戦闘機を撃ち落とす最強の制空戦闘機であるF15Cを日本で製造したものです。
一方韓国のF15Kは、空対空の戦闘力を少し犠牲にし、対地攻撃も行えるように60%にも及ぶ箇所を専用設計するF15Eをベースとしたマルチロール型戦闘機です。
F15Jは純粋な制空戦闘機、F15Kは戦闘攻撃機なのです。
純粋な空中戦ではF15Jに分があり、敵国を攻撃しないという航空自衛隊に適した戦闘機をチョイスし、現在に至ります。
韓国は北朝鮮の脅威が常に付きまとうため、陸上兵器も攻撃できるF15Kを導入、製造しています。
老朽化するF15
※↑圧倒的高解像度の動画 F15の迫力飛行シーン
F15は初飛行から40年以上たち、すでに設計そのものが時代遅れになりつつあります。
近代改修を繰り返しているとはいえ、40年以上前のコンピューターで設計された機体は現代技術からすると歴史的航空機といっても良いほどです。
現在アメリカでは、制空戦専用のF15Cを順次、最強のステルス戦闘機F22に切り替えており、それ以外を最新のF15Eに置き換えています。
F15Eは制空戦闘機ではありませんが、設計が新しいため様々なアップグレードにも対応しているためです。
アメリカはF15の老朽化を見据え、すでに1985年にF22の基となるコンセプト機開発の構想をスタート、1986年にはF22の試験専用航空機YF-22を飛行させています。
そして、10年以上前の1997年にはF15Cの戦闘力を圧倒的に上回るF22の開発を完了しています。
F15はすでに設計が時代遅れになっており、最新の電子機器を搭載するためのスペースや電力、様々な配線を設置することができません。
巨額の費用をかけて回収を行えば、中身を最新の機器に入れ替えることもできますが、そのコストは1機生産するよりも高額になるなど、日本が持つF15Jの老朽化が加速していくと考えられています。
F15は第4世代戦闘機であり、最新のF22は第5世代戦闘機です。1世代違うだけで、圧倒的な戦闘力の差があり、世界最強だったF15はF22との模擬空中戦で大差で敗れています。
これまで第5世代戦闘機を持つのは同盟国のアメリカだけでしたが、中国がF22に対抗するJ20を、ロシアがSu57を開発し、先進国の主力制空戦闘機は第5世代にそろい始めてきました。
一方、日本はF35の導入を進めていますが、F35は制空戦闘機ではなく、マルチロール戦闘機に分類されます。
機動力や空中戦ではF22よりも劣るため、対中国、対ロシアの日本の軍事力が相対的に低下していくことが考えられます。
既に日本は、アジアにおいて経済力、軍事力で支配的な力を持つ中国に対抗する力はありません。
世界最強のF22はアメリカだけが保有しており、そのアメリカの開発の主軸はすでに第6世代戦闘機へと移っています。
世界情勢の変化と、それに合わせたより良い日本を造るために変化が求められているのでしょう。
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