オーデュボンの祈り 伊坂幸太郎を早速レビューしました

オーデュボンの祈り 伊坂幸太郎をさっそくレビューしました
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オーデュボンの祈り

オーデュボンの祈り,伊坂幸太郎
伊坂幸太郎のデビュー作であり2000年に新潮社から出版され、同年の第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しました。

 

2004年にラジオドラマ化、2009年に漫画化、2011年には舞台化された。

 

【あらすじ】

 

主人公、伊藤のコンビニ強盗から物語は始まる。

 

伊藤は気付くと、見知らぬ島にたどり着いていた。

 

その島は荻島といって、江戸時代以来外界から鎖国をしているという。島には、嘘しか言わない画家や、島の法律として殺人を許された男、未来の見える、人語を操る案山子などがいた。

 

しかし伊藤が来た翌日、案山子はバラバラにされ、頭を持ち去られて死んでいた。

 

伊藤は「未来がわかる案山子はなぜ自分の死を阻止できなかったか」という疑問を持つ。

 

住民から聞いた「この島には、大切なものが最初から欠けている」という謎の言い伝え。

 

案山子の死と言い伝いの真相を追う伊藤の数日間を描く。

オーデュボンの祈り 伊坂幸太郎レビュー

 

オーデュボンの祈り』 伊坂幸太郎

 

処女作には、その作家の可能性が表れるという。

 

伊坂幸太郎さんのデビュー作でもある「オーデュボンの祈り」には、このあと各作品で研ぎ澄まされていった「問い」が大きく、確かに存在している。

 

伊坂作品の魅力の根源が、ここに。

 

まさに、そんな作品であるといえる作品なのではないでしょうか。

 

伊坂幸太郎作品をこれから読んでみようかなという方はもちろん、伊坂作品ファンだという方にはたまらない内容ではないかと思います。

 

 

明日、天気になあれ。誰もがきっと一度は口にしたことがあるだろう。

 

明日、晴れますようにと祈る言葉。

 

小さいけれど、これも確かな祈りであることにはかわりない。

 

私たちは、日々を生きるなかで大なり小なりの祈りを毎日口にして、あるいは胸のうちで唱えている。

 

残念ながら、数多の祈りは届くことはなく消えてしまうけれどそれにいちいち落胆していてはきっと誰も前に進めず、時間は止まってしまうかもしれない。

 

 

銀行強盗に失敗した伊藤がたどり着いたのは誰も知らない島「萩島」だった。

 

そこで、出会うのは不思議な人たちばかり。

 

人語を喋る未来を知るカカシだったり、殺人を許された男、太りすぎて動けなくなった女などなど。

 

萩島にいる人々と触れ合ううちに、そこにいるうちに、島に来る前の自分だったら絶対に受け入れたりはしないだろう「不思議」を伊藤は受け入れていく。

 

変わった不思議な人たちとの会話は、現実の不条理を浮き彫りにしていく。

 

そして、伊藤の来島は島の運命の歯車を大きな音をたてて動き出していく。

 

 

もしも、未来を知る人に会えたなら自分はどうするだろうか。

 

この先に起きることを聞きたくはならないひとはいないのではないだろうか。

 

もしも明日起きることがわかれば、一本早い電車にのったり、違う道を通ったり、いろいろ対策を練るかもしれない。

 

もしかしたら、その選択を変えた結果、また何かが襲うかもしれなくともとりあえずの安心は得られるのだから。

 

そういったとき、私たちはきまって、未来を知る者の気持ちは考えたりしない。

 

教えてくれなかった場合はきっと、どうしてどうしてと詰るのだ。

 

あるいは、恨みをぶつけたりするかもしれない。

 

知っていることが与える苦痛があるのだ、という事実には目を向けずに、気付くこともなく、だ。

 

 

萩島にはいる殺人を許された男。

 

彼の存在は、島民がそういうものである、と受け入れるからこそ成立しうるもの。

 

また、彼自身も自分がそういうものであるとうけいれているからこその存在。

 

萩島に存在するものは私たちの社会の仕組みが具現化しているものなのかもしれない。

受け入れがたいことは生きていればたくさんある。そうではないと生きていくことができないからだ。

 

作中の「一回しか生きられないんだから、全部受け入れるしかない」という言葉が読後も頭から離れてはくれない。

 

一度きりの人生、だなんて口にするのは簡単なことだけれど、それを実行するのはかなり厳しい。

 

自分の進むべき道に、大きな壁が立ち塞がったとき簡単なことは逃げることだ。

 

後々、苦しくなることはなんとなく選択の時にわかることではあるが、それでも立ち向かうを選択することは難しい。

 

そうして、逃げることを繰り返していけばいつのまにか八方ふさがりになってしまってどこにも行けなくなってしまうというのに。

 

逃げずに立ち向かうことは、苦しことだ。

 

自分が選んだ選択を疑いたくなることもきっとあるし、踏み出すことを戸惑うことだってある。

 

それでも、進んでいかなくてはいけないのは、生きているからなのだ。

 

 

伊坂幸太郎というひとの手にかかると、誰もが気付いているけれど見てみぬふりをしていること、あるいは気付いていないことが形をともなって私たちのもとにやってくる。

 

そして、変えなくてはいけないことだったり、感謝しなければいけないことだったりを気付かせてくれる。

 

読者である私たちに、とても鋭いものを突き付けてくるのだ。

 

壮大で、複雑なテーマが折り重なっている本作品であるが、伊坂ワールドの根源となるような作品であるのではないかと思わせてくれる。

 

徐々に研ぎ澄まされていく刃がいつかきっと姿が見えない敵に強大な一撃を食らわせる日が来ると信じさせてくれる言葉は、いつも私に勇気をくれる。

 

エンターテイメントとして楽しませてくれるだけでなく、何かを考えさせてくれる言葉たちではないだろうか。
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